2001.8.04
いよいよ明日
とうとう、この日がきてしまった。 明日が市民ミュージカルの本番。
練習開始から、あっという間の2週間だった。
みんなの意識、少しは変わったかな…。
こういう経験がない、普通の小学生や中学生の子がたくさんいる今回の舞台。
こう書くと、とてもえらそうに聞こえるんだけどね。
それでも、みんなに、楽しい思い出を作ってもらいたかった。
舞台の、きらめくような喜びを味わってほしかった。
人前で演じることの、緊張感、怖さを知ってほしかった。
こういう経験って、やったことない人には、味わえないものだしね。

今回、子供が多いということで、必要以上に気合、入ってたかもしれない。
大人も確かにそうなんだけど、ちょっとした空き時間ができると、ついついはしゃいじゃうのね。
その気持ちはわかる。
友達になったばかりだから、いろいろおしゃべりしたいのもわかる。
ちょっとぐらいなら、目をつぶってあげたいんだけどね。
でも放っておくと、どんどんエスカレートしちゃう。
大声でしゃべったり、みんなで踊りだしたり、走り回りだしたり、なぜか、取っ組み合いみたいになったり…。
ちょっと離れたところで、他の人が先生の指導を受けてたり、先生たちが話し合ってたりする場だから、どうにか収拾つけなきゃいけなくなる。
最初は、「静かにしようね」 なんて言ってたけど、慣れてくるとだんだん、遠慮がなくなる。
「いいかげんにしなさい! 今しゃべる時じゃないでしょ!」なんて、叱り付ける時もしばしば。
叱りつけた後は、自分で自己嫌悪になる。
なにもみんなの前で、そんなに言わなくてもよかったかな、って思うし。
ミュージカルの練習でいやな思いをさせるのは、やっぱり本意じゃないし。
でもね、やっぱり『偉そう』なんだけど、大人の責任かなって思うとね。
去年の出演者だから、経験もある。 年齢もみんなより上。 (もっと上の人もいるけどね)
しかも私、今回は実行委員っていう肩書きもあったから、ちょっとは言ってもいい立場かなって思うことにして。
演出のH先生にも、音楽監督のI先生にも、負担をかけたくない。
そのためには、『意地悪ばあさん』的な、叱りつけ担当も必要かな…って。
自分で勝手にそう思って、勝手に実践してきた。
幸い、子供たちの反応が、とてもありがたかった。
私に叱られた子も、私のことを嫌いになるとか避けるようになる、なんてことがなくて次の時にはニコニコしてくれた。
叱っても叱っても、全然効果ない子もいるけど(^^ゞ、それでも変にひねくれたりはしなかったしね。
やっぱりみんな、いい子なのね。きっと。
小学校の娘のクラスでも思ったんだけど、大人の本気とか真剣さは、ちゃんと子供に伝わるのね。
こっちの思い、わかってもらえて、とても嬉しかった。

明日は私、きっとニコニコしてると思う。
袖で待っているとき、着替えをしてるとき、すれ違う子たちに、『がんばってね』っていうと思う。
一人一人、ベストを尽くしてほしい。 1番ステキな自分で、舞台に上がってほしい。
あの子たちなら、やれるんじゃないかな…。きっとね。
そんなことより、自分の方が、よっぽど心配だけど。
なんとかダンスは大丈夫。 自信を持って、のびのび踊ればいいかな。
オペラティックの歌が1番心配。
ずっと昔の、声楽の試験のときの気持ちが、よみがえってくるみたい。
緊張すると、よけいにうまくは歌えないしね。
せめて練習のときのつもりで、落ちついて歌えたらいいな…って、それだけ。
風邪もどうにか治って、変だったのども落ちついたし。
自然と一つになったインディアンと、人間離れしたエイリアンと、演じわけなきゃ。
現実と離れてるから、楽しく演じることができるし、思いきって『奇妙』にもなれる。
お客さんに、『ものすごく変だった』って思ってもらえたら、成功よね。
とにかく、印象に残る演技をしたい。
緊張して眠れない…なんてことがないといいんだけど(^^ゞ
いよいよ、明日だ。

2001.8.12
♪LIFE IS FULL OF DANCE  Part.1♪
8月5日、いよいよ、ミュージカル小公演の当日を迎えた。
泣いても笑っても、今日一日ですべてが終わる。
実行委員会の準備も、たぶん大丈夫。
今年は、Kさんを始めとする、強力な布陣が敷かれている。
私、舞台に出てしまうから、何もできないけど、任せておいたら完璧。
受付業務も、出演者の子供たちの管理も、衣装や小道具のチェックも…。
こういうバックアップがあるっていうのは、本当に心強いなって、思った。

朝、5階にある控え室に行き、まずはメイクに取りかかる。
子供たち、ほとんどがメイクの経験がない。(…当然だけどね)
付き添いのお母さんたちも、チークやシャドー、アイメイクなど、舞台用のメイクは、経験がないみたい。
経験者が、手分けして、メイクをしてあげることになった。
着替えさせた娘にメイクをし、それから次々と、そばにいる子供たちのメイクをする。
アイラインを入れて、色を乗せて、チークを入れて。
シャドーとハイライトを入れて、もっと目立つようにしなきゃ。
仕上げに、ラメ入りジェル(100円ショップで見つけて、エアロの発表会や去年のミュージカルに大活躍のもの)を薄く、目の上に塗る。
キラキラやお星さまがついて、舞台の照明に当たると、とってもきれいなのね。
「これ、魔法のお粉だから。うまくいきますように…ってね。とってもきれいよ」
ちょっと緊張して目をつぶっている子供たちに、呪文をかけてあげる。
「ほら、どお?」近くにいるお母さんたちに見てもらう。
「あらあ…ステキよ!」って言ってもらうと、みんな、ちょっと照れた顔で笑う。
何人ものメイクを仕上げているうちに、気がついたら集合時間が迫ってた。
今日1回目のリハーサル。本番まで、あと2回しかないリハーサル。
とりあえず着替えをして、急いでホールに向かう。

今回、舞台での通し稽古が、何回かあったのね。
全部で45分くらいの短いお芝居だから、できることなんだけど。
小道具のトラブルや、自分のミス、何度もあったのね。
エイリアンのダンスの途中、手に持ったフライ返しが、すっぽ抜けて落ちたとか。
(誰かに当たるなんていう事故がなくてよかったけど)
同じく、エイリアンの衣装のスカーフが、歌ってるうちに取れちゃったとか。
(急いでて、ピンで留めるの忘れてた…)
インディアンからエイリアンの着替えが、ぎりぎりで何とか間に合ったとか。
衣装付けての通し稽古じゃないと気がつかないことや、失敗して気がついたことがいろいろとあってとても助かった。
1シーンが、5分ちょっとくらいで、あっという間なんだけど、それぞれのシーンに、役柄になりきろうと考えてた。
それまでの練習にも、自分なりに工夫してたんだけど、やっぱり本当の舞台は違う。
光の中に、観客席(ほとんど空っぽだけど)を前にして立つだけで、気持ちが高まる。
いい意味で、緊張が高まるのが、自分でもよくわかった。
この気持ちを味わってしまったら、舞台から降りることができないな、って思った。
舞台にいる一瞬一瞬を、楽しみたいと思った。

14:30。いよいよ、開場。
子供たちが、こっそり様子を見に行って、興奮気味に教えてくれた。
「すっごく並んでるよぉ!!!」 ほんとによかったね。
「がんばらなきゃあね」と笑うと、みんな、真剣な顔でうなずく。
1ベルが鳴り、2ベルが鳴って、音楽が始まった。
今回、ピアノ連弾と、バイオリン2本、それにパーカッションの生演奏。
それに、ところどころに、効果音が入る。
狭い舞台だから、主役の少年役の二人がピンマイク、通訳役の二人にマイク、舞台の前に集音マイクが立っているだけ。
あとの人は、しっかりしゃべらないと後ろまで通らないね。
主役の子が登場し、少年たちにからかわれ、もう一人の主役の男の子と出会う。
そこにダンスの国の王女やエンジェルが登場し、二人に魔法のキャンディを渡し、冒険の旅へと誘う。
袖からドアを隔てた通路で待っていると、かすかに声や音が聞こえる。
この次が、娘が出るアリの世界のシーン。
先にセリフがある他の2人と一緒に、娘はもう袖にスタンバイしてる。
始まる前に、もう少し、声をかけてやりたかったな…なんて、ふと思ったけど。
でも彼女は彼女。舞台にのる時は、何もしてあげられない。
逆に私が、気にしない方が、のびのびできるかもしれない。
今回、私も彼女も、二役をもらっていたから、バタバタしててね。
グループ練習があったから、練習すらまったく見ることができなかったの。
「詩織ちゃんは大丈夫よ」というIさんの言葉を信じて、がんばってくれることを祈ってた。
音楽がきこえ、ダンスが始まったのがわかった。
次がインディアンのシーンだから、袖にスタンバイしなきゃね。
袖からそっと見ると、娘、楽しそうに歌って踊っていた。
本番のときに舞台を楽しめるようになったら、すごいことよね。

アリのダンスが終わり、次がインディアンのシーン。
舞台の転換のため、白い布を持った担当の出演者が、袖から走り出て、布をひるがえして戻ってくる。
パーカッションの音に合わせて、インディアンたちが登場。
両手を広げ、頭の上で合わせて胸までおろす。
次に、また両手を広げ、顔の横でひらひらさせて下ろす。
これが基本パターン。インディアンの雨乞いダンスで、神と大地に祈りをささげる動き。
一列になって歩きながら、舞台をぐるっと回る。
舞台の光の中で歩いていると、気持ちがどんどん入っていく。
シンプルな動きだからかなあ…。 どんどん無心になっていく。
「上に伸びるノリよりも、床を踏みしめるような動きを大事に。」
そんな風に言ったH先生の言葉を、思い出しながら、全員で歌い始める。
お客さんの顔が見える。 200人くらいのホールがほぼいっぱい。
今、私は祈って踊るインディアン。 少し無表情に、でも目の力を強くする。
1番が全員のコーラス、2番が掛け合い、その後、ダンスのソロパートで、私たちは手拍子と掛け声をかける。
そして3番で、また全員の掛け合い。
踊って歌っている間に、晴れた空から雨が降り、どんどん強くなっていくという設定だから、どんどん盛り上がらないといけない。
練習のとき、ダンスにいっしょうけんめいで、歌が小さかったりしてとても不安だったんだけど、本番は大丈夫だった。
お客さんに、雰囲気、伝わったかな…大丈夫かしら。
次のエイリアンへの着替えのために、通路に駆け込みながら、気持ちを切り替えた。