2001.7.22
2度目だもんね
とうとう、市民ミュージカルの稽古が始まった。
なんといっても、今回は稽古日数が極端に少ない。
数えてみると…。
7月15日(強化レッスン)、20日、22日、28日、29日と、7月が5回。
8月3日の通し稽古、4日のゲネプロ、そして5日が本番。
「これでほんとに大丈夫なの…?」 去年の参加者から、こういう声が聞こえる。
集中して、これで作るしかないんだから…。
不安だけど仕方ないという思いで、とにかく練習!!!

今回のストーリーを説明しなきゃね。
設定は、2000年の日本のとある町。
帰国子女であるジュンは、いじめっ子にもからかわれ、日本の学校になじめないでいる。
そこで、ビリー(アメリカインディアンの子孫)と出会う。
ビリーのおじいさんにもらった魔法の石のおかげで、二人は魔法の旅に出る。
そして、ダンスの国の王女に出会い、魔法のキャンディをもらう。
「キャンディを食べれば、違う世界に行けるわ。困ったことがあったら私を呼びなさいね」
魔法のキャンディを食べ、二人はいろんな世界に行き、いろんなダンスを見せてもらう。
アリの国での働きアリたちの働くダンス、1800年のインディアンの世界での雨乞いのダンス。
宇宙に行き、宇宙の月や星のダンスを見た二人は、エイリアンに誘われ、エイリアンの星へ。
実はそのエイリアンたち、二人を食べるのが目的で、キャンディを取り上げられた二人は、「これからおまえたちを食べるんだ!」という恐ろしいディナーダンスに震え上がり、王女に助けを求める。
間一髪、王女に救ってもらい、人生はいろんなダンスに彩られてるとわかった二人は、いじめっ子たちとも分かり合える。
このストーリーに、短い英語のセリフと、交互にカバーする日本語(通訳)のセリフが入り、歌とダンスでシーンが展開する。

今回、娘がもらったのが、アリの役(セリフつき)とエイリアンの役。
私がもらったのが、インディアン(歌の一部ソロつき)の役とエイリアン(歌のデュエット)の役。
歌もセリフも、とにかく英語。
歌詞を覚えるのも、メロディを覚えるのも、とにかく心配でね。
娘のセリフ、そんなに難しくはないのだけど、とにかく覚えさせなきゃということで、強化レッスンまでの間に、何とか教え込んだ。
歌詞も、単語じゃなく、英語に聞こえるようなカタカナで覚えさせた。
(本当は単語でわかってほしかったけど、そういう状況じゃないもんね)
意味を説明しながらだから、芝居の流れは、ちゃんと理解できたと思う。
娘だけじゃなく、私のパートもあるわけだから、娘に覚えさせながら、自分の歌も練習した。
楽譜を見て、歌詞を頭に入れて、何度も繰り返し歌って歌って歌って…。
人間、必死になると、けっこう覚えるものね。
笑っちゃったのが、テーマ曲。
娘たち子供はメロディーフレーズ、私はたぶんソプラノのコーラスになると思ったから、娘にはメロディーを教え、私はソプラノを練習していたのね。
気がついたら、娘、ソプラノパートを完全に歌えるようになっていた。
繰り返し聴くことで、こんなに覚えると思わなかった(*^_^*)
「ねぇ、ママのところじゃなくて、自分のとこ練習しなさいよぉ」
「ママのところのほうがいいなあ…」
こんな会話もあったくらいだった。

15日の強化レッスンで、小学生中心のレッスンがあった。
みんな、いっしょうけんめい。
ちょっとふざけたりしていても、注意されるとしーんとなる。
自分のもらった役を、おうちで見てきた子、まったく見てこなかった子とでは、明らかに差が出ている。
娘も堂々と演じることができ、ホッと一安心。
今回、娘の小学校で、ボランティアに参加している英語クラブの生徒さんにも、ミュージカルの案内をしたのね。
その中から、ゆうなちゃんが応募してくれて。
英語クラブの後、歌うところを説明したり、歌詞の読み方を説明したんだけど、おうちやピアノの先生のところで、ちゃんと練習してきてくれたらしい。
まったく危なげなく歌ってくれていて、とても嬉しかった。
小学生の強化レッスンということで、人数が全体の半分くらいだったけど、最初から最後まで通して練習したところだけをつないでやってみた。
全体の流れ、台本で見ただけより、ずっと頭に入った。
これに音楽がつき、ダンスが入ったら、どんな風になるんだろうと、とてもワクワクした。

舞台って、もちろん本番でお客さんに見てもらえるのが、一番楽しいんだけどね。
それを作っている過程も、本当に楽しいと思える。
覚えるのは大変、練習はつらい、それは当たり前なんだけど。
自分の演じている役柄が、他の役柄と合わさって、ひとつのシーンができる。
自分の演じているシーンが、他のシーンと合わさって、一つの舞台ができあがっていく。
この作業って、ジグソーパズルにとても似てるよね。
なんだかわからないパーツが、何かの形になって、それが1枚の絵に仕上がる。
できあがりを喜ぶより、その途中途中が楽しくて、せっかくできあがったパズルをまた壊して、最初から始めたくなる。
この喜びを知ってしまったら、もう自分からはやめられなくなってしまう。
たぶん娘も、そうなのだと思う。
「わたしたち、2度目だもんね。」 娘がそう言う。
「きょねん、ぶたいに立ったもんね。」
うん、そう思ってていいよ。ちゃんと経験したんだから。
それを口に出したら、自慢みたいになっちゃうけどね(*^_^*)
去年のすばらしい経験を、今年の舞台に、ちゃんと生かそうね。

さぁ…いよいよ、本練習が始まる。

2001.7.23
こわいよ!
20日のレッスン開始、全員が集まった。
いよいよ、ダンスの振り付けを中心とした、ミュージカルの稽古が始まる。
歌は、自宅でも予習復習できるけど、振り付けはそういうわけにはいかないもんね。
全部、ここで習ったことを、覚えていかなきゃいけない。
「インディアンのダンス、難しくなっちゃったわよ」 I先生にそう聞かされていたから、とても不安だった。
地に足のついた、体でリズムを表現するダンス。
そういう雰囲気で、説明をされた。
どこかで見たことがある、インディアンを思い出して、振りを体に入れる。
1番と2番は、場所が変わって同じ振りの繰り返し。
間奏に、2人のデュエットダンスが入る。
その後、掛け声の応酬が入り、私が中央でやらせてもらえることになった。
そして3番。 1・2番の振りのアレンジ。
頭では、何となく覚えられたけど、体がどうしても遅れる。
しかも、歌を歌いながらだから、両方中途半端になる。
たぶん振りは、そんなに難しくないはずなのに、できない自分にイライラする。
私より年上のDさんTさんも大変らしく、何度も繰り返し、グループ練習をした。

エイリアンのところは、とにかく歌が大変。
早口言葉みたいな歌詞が、たくさん出てくる。
娘には、ゆっくりやったり、丁寧に繰り返し練習させたけど、全員にわかるまでやることは無理かな…。
わからない子には、カタカタを振ってもらって、後はリズムに合わせて、口を動かしてもらうことにした。
うん、小学校高学年以上は、後は自宅でしてもらうしかないわ。
手拍子を取りながら、歌を繰り返し練習。
その後、演出のH先生の前で、動きをつけてもらうことになった。
今回のエイリアンは、主役の子供たちを食べようとする怖い役。
日本語にはできないような、すごい歌詞がバンバン歌に入る。
(足が好きとか、シチューにして食べちゃおう、とか…)
歌もリズミカルで、とても楽しそうなんだけど、そのなかに恐ろしさをふくませなきゃいけない。
だから登場も、低い姿勢で床をなめるような感じ。
無気味に笑ったり、腕を振り回したりと、「とにかく壊れて」 という指示だった。
小学生、中学生の子には、ちょっと大変かもしれないけど、そこは大人(*^_^*)
私なりに、不気味にほほえんだり、うなったりとがんばった。
主役の少年役の光ちゃんのささやきが耳に入る。
「Nonさん怖い…」
思わず苦笑したが、これって誉め言葉だよね。

2つ掛け持ちで役をもらってるから、パート練習になると、行ったり来たり。
おかげで、娘のアリさんシーンには、まったく注意がいかなかった。
「ちゃんとやれたよ! かみのけもさわらなかったし。」
そう、娘、オーディションの歌の時、緊張のあまりか、しょっちゅう髪に手をやって、後から私に注意されたの。
「今からやってると、癖になっちゃって、本番でもやるよ」
それを気をつけてたのなら、ほんとによかった。
私が、娘の練習に口を出せない状況っていうのも、悪くないかも…。
ステージママやってる暇はないもの、今回。
インディアンのダンスの振りで、ももをたたいたり、膝をついたりの繰り返しで、足が痛くなった。
うちに帰って見たら、ももに打身の斑点、膝にこぶができていた。

1日おいた22日も、練習だった。
朝から何となくだるいような、疲れてるような感じだったけど、とにかく練習練習。
女性センターアイムの健康サロンと学習室の2ヶ所が練習場所になっていたので、各シーンともパート練習を進めていく。
インディアンのパートは地声の音域、エイリアンはソプラノの音域と、使い分けなきゃいけないので、声もいろいろ出さなきゃいけない。
低いところは、ついつい、力が入ってしまう。
ちょっとのどに無理してるかな…だからのどが痛いのかな…と思いながら、のどスプレーを使ったりしていた。
足の痛みも、まだ引かないけど、ダンスになるとちゃんと動けるのがふしぎ。
ひょっとしたら、逆療法になってたのかもね。

エイリアンのパート、インディアンのパート、それぞれがだんだんできあがっていく。
今日休んだ人に、ちゃんと教えてあげなきゃ…。
エイリアンのところで、光ちゃんも、もう一人の主役のあすかちゃんも、私のことを怖いという。
笑いながらせりふを言うのが、ものすごく怖いそうだ。
だって、仕方ないよねえ…(^^ゞ それが演技なんだから。
「エイリアンの演技、もっともっと壊れて」 というH先生の指示に、光ちゃんたちが一言。
「Nonさんは、それ以上壊れると怖い!」
「もっともっとテンションあがるから、もっと怖くなるわよ。」 笑っていったら、キャアと言われてしまった(^^ゞ

インディアンのシーン、やっぱりダンスが大変。
全員がちゃんとそろっているのか、とても自信がない。(人のことを気にしている余裕はないのだけど)
振りはそろっているか、歌は歌えているか…。
何度も繰り返し練習するが、自分で納得ができない。
不安だな…もっとうちで練習しなきゃ。
でも、2日目で、どこがあやしいかはっきりしてきたから、自宅での練習が的をしぼれそうだ。

エイリアンのデュエットパートの練習が、個別に行われた。
今回のミュージカルで、唯一といった、クラシック的な高音の派手なパート。
オペラチックにと言われて、プレッシャーがあるのだけど、やりがいがとてもある。
上体をあまり動かさないように、あまりノリ過ぎないようにと、いろんなアドバイスを受け、自分なりにがんばってみる。
もっとクラシックの声楽を、ちゃんと勉強しておけばよかった…なんて、後悔してしまうくらい、声楽科の学生のNさんは、いい声の持ち主。
一緒にハモるのが、ちょっと恥ずかしくなるけど、まったく違う声質だから逆に、違う味が出ていいかもしれないしね。
(そう思わないと、私が選ばれた理由がわからない・(^^ゞ
私なりに、どこまでオペラに近づけるか、チャレンジしてみたいと思う。

レッスンが終わり(ほんとうはもう少しあったんだけど、私がつらそうに見えたのか、I先生から「帰っていいよ」と言われた)、衣裳製作に余念がない実行委員さんたちに声をかけた。
「お疲れさまです。なんか私、風邪っぽいかも」
ほんとに冗談のつもりだったんだけど、Kさんが額に手をあててくれて。
「あら、熱あるよ。早く帰んなさい。」
「えー、ほんとに?(^^ゞ」
笑ってみせて、娘を連れて帰る途中、やっぱり気分が悪くなった。
自転車をこぐ足が、とても重くてなかなか前に進まない。
うちに帰って熱を計ったら、39℃あった。
「具合が悪いときは無理をしないでね。」
I先生のメールが、とてもありがたかった。
今、具合悪くなってる暇なんてないもんね。
さぁ…本番まで、あと4回。