2001.4.15
♪若葉のころ♪
昨年、市民ミュージカルの稽古で、日曜日に仕事ができなかったため、数カ月ぶりのブライダルの仕事だった今日。
そういえば、今年は、国立の桜を見に来ることがなかった。
今年の東京の桜は、あっという間に満開になり、あっという間に散ったイメージがあるんだけど、道の両側に一橋大学をはさんだ、大学通の新緑が目にまぶしかった。
式なしのパーティー。
曲目はすべてお任せということだったので、初めて新郎新婦にお目にかかった。
ノースリーブのシンプルなドレスが、すっきりとよく似合うスリムで背の高い新婦さんと、さらに背の高いスマートな新郎は、とてもお似合いのカップルだった。
お二人の出会いは、とある結婚披露宴。
その日の新婦の兄と、同じく新婦の元同僚の女性との出会いは、運命的だったようで、遠距離恋愛をへて、今日、無事にゴールインとなったそうだ。
今日のお客様も、ごく親しいお友だちやご親族の方ばかりで、こぢんまりとしていてとても和やかだった。

久しぶりの仕事とあって、少し緊張気味だった私。
披露宴が始まる少し前のざわざわした空気の中、中村百合子の曲を弾き始めた。
HPにも公開したことのある『パストラル』。
やわらかなアルペジオが、レストランの喧噪に溶け、天窓からさし込む陽の光に、お店の中がふわっと明るくなった気がした。
そう、BGMは、いつ始まったのかわからないくらい、自然な方が好き。
そういう意味で、この曲はとても好きで、挙式や披露宴の始まる少し前のBGMとして、よく演奏している。
「いいねえ…」なんていうお客様の声に、エーカッコシイの私(*^_^*)、笑顔も倍になる。

ご親族の中に、まだ小さいお嬢さんが二人いた。
ひとりは3〜4歳だろうか、ピアノのすぐそばの席で、小さいわりにはとてもおりこうにしていた。
リクエストが、「ちゅーりっぷ」と「どんぐりころころ」。
これに、ディズニーの「ミッキーマウスマーチ」と「It's A Small World」をつなげて、簡単なアレンジのメドレーにした。
もうひとりはあとから聞いたら1歳ということで、お客様のお祝いの歌(カラオケを使った)の間じゅう小さな手をパチパチたたいたり、体をゆすって踊ったり、そばにしゃがんていた私の手をさわりにきては、ママの背中に隠れたりと、おしゃまさんだった。
彼女のリクエストは、「ぞうさん」だった。
それまで演奏していた、映画音楽やジャズとは、まったくジャンルが違うリクエストだけど。
こういうところに、生演奏の良さがあると思う。
なんといっても、臨機応変が利くものね(*^_^*)

和やかなパーティーも、終わりの時間を迎えた。
今日の引き出物の中の引き菓子、手作りだったらしいんだけどね。
新婦のご近所の、ほんとに親しくしていた方が、新婦のためにクッキーを作ってくれたのだという。
最初から最後まで、ほんとにアットホームで手作り感覚いっぱいのパーティーで、この日に演奏ができたのが、とても嬉しかった。
気持ちがいいまま、自転車のペダルをこぐ足にも力が入り、なんだか汗ばんだ顔に、風が心地よかった。

2001.5.13
2年生になって
昨年6月から、娘の学校で、サークル活動をしていた。
本の読み聞かせボランティアグループ、「おはなしサークル・おひさま」
4人のお母さんたちで始めたサークルが、少しずつ、学校に浸透していって、各学年合わせて15人くらいの集団になった。
毎週1回の活動だったけど、うちのクラス、メンバーさんが4人になったので、月に1回の順番で本を読んできた。

1年生の頃の娘のクラス、ちょっと大変でね。
まだまだ集団生活になじめない子が数人いて、クラス全体がまとまらなくなっていて。
「学級崩壊」なんて言葉、当てはめるのは簡単なことだったかもしれない。
でも、担任の先生も校長先生も、そうは言わなかった。
まずはクラスとして、まとまっていけるように、学校全体でバックアップしてくれた。
算数や国語、水泳などでも、積極的にお母さんたちがボランティアに入り、先生のお手伝いをしている状況をつくった。
そんな中で、本読みボランティアは、なかなか、大変な作業だった。
最初、授業前の15分(職員会議中)を充てていたのだけど、どうしてもうまくいかなくてね。
みんなに聞いてもらおうと必死で、読む当番以外のお母さんも必ず出席して。
立ち上がった子やおしゃべりをする子を注意したり、教室を出ていく子を追いかけたりして。
楽しい時間のはずなのに、だんだん、「大変さ」ばかり、気になるようになって。
それで先生と相談して、図書の時間の15分をもらうことにして、先生同席で、活動を続けてきた。
メンバー以外のお母さんも、聞きに来てくれたりと、ずいぶん助けてもらった。

今年に入り、学校の予定が変わり、活動時間が変わった。
去年一年、代表を務めてくれたMさんも任期満了ということで、私が代表をすることになった。
正直、どうしたらいいか、わからなかった。
4人の運営委員の1人として、活動内容は把握してきたつもりだったけど、正直、とても荷が重かった。
今年の初めの運営委員会の時、Mさんが、代表を降りたいと言い出した。
「任期、1年でいいよね?」
学校との交渉、メンバーの調整、保護者への手紙の下書き、その他…。
1年間、いろいろ奔走してくれた彼女の苦労をある程度わかるだけに、反対する気にはなれなかった。
「それなら今年は私がやるよ。」
そんな言葉が、すんなり口をついて出た。
学級委員の仕事が終わり、少し気楽になったからかもしれないけど。
引き受けてから、大変だなと実感した。
Mさん、お嬢さんが4年生でいろいろ知り合いも多く、各学年のお友だちに声をかけたりと、メンバー獲得をがんばってくれていたから。
結局、学校との交渉などは私がやり、メンバーのフォローはMさんがしてくれることになり、少し気が楽になった。
「私、裏方や使い走りは、なんでもやるから言ってよ」
Mさんの笑顔に、かなり勇気づけられた。

GW明けから、本年度の活動をすることになり、各学年のメンバーへの伝達や、学校の担当の先生へのお願いなどが終わり、やっと落ちついて、今年最初の活動日を迎えた。
5月9日の朝。
新しい1年生のクラスでメンバーになってくれたMさんが、見学に来てくれて、その日の読み聞かせをすることになった。
とっても久しぶり…3月以来だから。
コの字型におかれた机の真ん中に、敷物がしいてあり、子供たちが座っていた。
子供たちの前に立ち、いつもみたいに挨拶。
「今日はね、1年生のお母さんがみんなの見学に来てくれました。やっぱり2年生はすごいねー、って言われるようにがんばってね」
みんな、後ろを振り返り、ちょっと背を伸ばすように座る。
気がついたら、いつも立ち上がってた子が、座ってる。
いつも後ろでおしゃべりしてた子も、一緒に座ってる。
Mさんの視線を感じながら、手遊びを始めた。
うん…みんな楽しそう。
その日のお話は、「おむすびころりん」。
日本の昔話って、逆に新鮮かもしれないと思い、選んだ題材だった。

「次、こうなるんだよね?」 なんてしゃべり出す子も、気にしない気にしない。
子供たちの顔を見ながら、できるだけ笑顔で、読み続けた。
2月に、中央図書館の読み聞かせ講座で、本の持ち方や読み方を習った。
それを思い出しながら、本の持ち方、ページのめくり方を気をつけながら、読み進んだ。
小さな声で隣とおしゃべりしてる子も、すぐにこっちを向いて聞いている。
全部で10分くらいのお話が終わり、子供たちは、パチパチと拍手をしてくれた。
誰も立ち上がっていない。
2年生になって、こんなに変わるものなんだろうか…。
本を閉じた私、その場の空気に、ものすごく感動していた。
「今日、ほんとにみんな、静かに聞いてくれたね。すごい! 拍手!!!」
子供たちと一緒に、拍手をしながら、私はとても幸せだった。
「お話楽しかった?」なんて、子供たちに感動の押し売りをしちゃいけない。
せっかくの余韻を消さないようにって、図書館で講義を受けたけど。
みんなで一緒に、本を聞けたっていう感動は、味わってもいいよね。
1年間やってきたボランティアが、やっと形になった気がした。